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テキストでつづるエッセイ「ふみの文」
今回ちょっと長くなるので小分けにします。お付き合いお願いします
伝説のSNS上司・たかを(1)狙撃級の友達申請

まだ社会の右左もわからぬ初々しさ溢るる私が、とある企業に勤めていた頃の話だ。どうでもいいが私にだってそんな花の時代があった。
私の席のすぐ隣には、部署の上司。いつも無言でキーボードを叩き、表情は静かな湖面。だがいつも苦虫をかみつぶしたような表情だった。
私は心の中で彼を「たかを」と呼んでいた(もちろん仮名)。某漫画の後ろに立たれるのを嫌う殺し屋みたいな“気配”をまとっていたからだ。
しかし体型はどちらかというと猫型ロボット派であることは付け加えておく。
正直、ちょっと怖かった。
話しかけたら狙撃されそう…そんなオーラ。だから私は用事がない限り、極力話しかけず静かにしていた。
そんなある日の昼休み。会社を探索していたら、庭の喫煙所でたかをがひとり、煙を細くのばしていた。
私は挨拶して通り過ぎるつもりだったのに——
「おつかれさ「ねえ、SNSやってる?」
食い気味に飛んできたたかをからの質問。時は某・紹介制SNS全盛期。
私は当時、身内だけだと思って好き勝手に近況を書いていた。ここで嘘をつくと、のちのち自分が困るやつだ。
何より、嘘ってだいたい顔に出る。私はそうなのだ。その後リカバリーする自信もない。ええい…ままよ…
「……はい」
観念して答えると、たかをの顔がブワッとほころんだ。超A級スナイパーも笑顔になるんやな。
「わー! 申請するから友達になろ!」
新人の私には、それはもう“直球の依頼”。狙撃も同然だ。上司だし、断り方も知らない。結果、私たちはSNS上で“友達”になった。
たかをはとても筆まめだった。
SNSはなんと毎日更新。
近況、思い出、若き日の武勇伝、そしてネットの流行語もたっぷり。
たかをにとっては大切な日記なのだろう。けれど私には、ちょっとまぶしすぎた。読むたび、むずがゆい。
さらに言い忘れたのだがたかをはこの時点で年齢は50代手前である。
私はいつしか、そっと「足跡だけ」残す派になっていった。
ある日、昼休み。
「なぁ、オレの投稿、見てる?」と声をかけられた。
漫画みたいに、自分の体から「ギクッ」と音がした気がする。
「私、ほんと忘れっぽくて……見ているんですが中身まで覚えてられなくて…すみません」
正直に言うと、たかをは少し不満そう。でも、それ以上追及はしなかった。
その後、新人が何人か入ってきた。
たかをは彼らにも「SNSやってる?」と友達申請という名の狙撃を続けていた。さすがスナイパーである。私はちょっと怖くなっていた。
そしてこの出来事は、まだ序章にすぎなかったのだ——(つづく)
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