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テキストでつづるエッセイ「ふみの文」
甘いメダルの賞味期限

先日、娘がとある街のお菓子屋さんが開催する絵のコンテストで入賞した。
「メダルがもらえるんだって!」と聞かされたとき、私の頭に浮かんだのは
運動会で首にかけてもらったあのキラキラ光るメッキのメダルだった。
首から下げたときの重み、チャリンと当たる音、妙に誇らしい気持ち。
あれを娘がかけてもらうのかと想像して、私は勝手に胸を熱くしていた。
ところが渡されたのは……なんと、クッキーでできたメダルだった。
かわいいリボンがついていて、一応「首にかけられる」仕様になっている。
でも、その本体はサクサクのクッキー。金色の輝きの代わりに、ほんのり甘い香りがただよっている。
「えっ……食べるの?」と娘は目をまんまるにして、うれしそうに困惑していた。
わかる、わかるよ。私も最初は「食べたら消えるじゃない!」と心の中で突っ込みを入れた。
記念品って、普通は取っておけるものだと思うじゃないか。
「これ、食べたらなくなるやんね?」
「そらそやな、クッキーやもんな」
「食べたいけど、食べたくないなあ」
娘はそんなふうにメダルを前にして小さな葛藤をくり返していた。
結局、「うち気が済むまで飾ってから食べることにするわ!」と自分で結論を出したらしい。
飾っているうちに少しずつ湿気ちゃうんじゃないか、と心配するのは母のほうで、娘はただただ誇らしげに机の上に並べている。
その姿を見て、私はふと納得した。
形が残らなくても、すぐに食べちゃわなくてもいい。
手元にあるあいだも、それは立派な記念品なのだ。食べられる勲章なんて、なかなかもらえるものじゃない。
娘は毎日そのメダルを見ては満足気。
時々「どんな味すんねんやろ」とニヤリと笑う。
クッキーの甘い香りにじらされながら、おそらく賞味期限ぎりぎりまでこのやりとりを楽しむのだろう。
手元に残らなくても、心には残る。むしろ「残らない」からこそ、強く刻まれるんじゃないか。
クッキーのメダルは、そんな記憶の作り方を教えてくれた。ありがたし。
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